数学教育講話V




大学(理学部)では数学を、大学院(教育学研究科)では数学教育学を専攻した後、山口県の公立高校教員(数学)として採用され、早四半世紀が経過した。

大学3年生のとき、教員免許取得のために教育学部で「数学科教育法」を受講し、そこで数学教育学において日本で初めて学位を取得された平林一栄先生(広島大学教育学部教授)の講義に感銘を受け、数学教育学の道に進むことを決意した。というのも、それまでは純粋数学の習得に専念していたが、いずれは数学を教える立場になる身であることもあり、学習者から指導者へと立場や視点を替えて数学を見ることや心理学的な考察で数学的活動を捉えることに新鮮さと興味が湧いてきたからである。

修士論文は、『数学学習の心理学的研究―R.R.Skemp を中心にして―』であり、主に高校までの数学が「わかる」ことについて、Skemp の研究を基にして分類や特性の分析を中心に研究を行った。

さて、「わかる」授業を展開し、児童・生徒の興味、関心、意欲などを引き出し、教育効果を上げようとする教育実践はあるが、肝心の「わかる」ことについての理解が十分なのであろうか。つまり、「わかる」算数の授業とか「わかる」数学の授業というタイトルの実践は数多くあるが、その実践が「わかる」ことを十分に考察した上での実践なのだろうか。算数・数学教育における「わかる」ことの意味をしっかり理解した上で、それに立脚した実践でなければ効果半減であり、この「メタ理解」を視野に入れることが今の数学教育の課題である。


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