作者名 | 作品の分類 | ページ数 |
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西元教善 | 数学教育学 | 126 |
ISBN | 書籍サイズ | 定価(税込・円) |
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978-4-86420-013-4 | A5 | 1,980 |
概要 |
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現在、算数や数学の学力を向上させるためにさまざまな取組みが行われています。小学校では算数、中学校や高校では数学についてそれぞれの学校種別に担当教員が工夫をして、どうにかして児童・生徒の算数・数学力を高めようとしています。 国内外でも学力到達度調査が行われていますが、これくらいはできるだろうという設定通過率を下回ることもしばしばです。想定外に学力が低いということが判明して、あらためて愕然とするのですが、もうやるしかないといった瀬戸際に立たされているのが日本の現状であると思われます。 ちょっとした計算でも電卓マークが付いていて、手計算をしないことに慣れてしまうと計算力さえ定着しません。計算はできるが文章題はちょっと苦手という時代ではなく、計算さえもできない子どもが多くなりました。それよりも興味・関心、意欲が希薄になって、学びから逃避し、わからなくてもできなくても一向に構わないという「恥ずかしさ」さえ持たなくなっているのは、恥を捨てた世の趨勢を反映しているようでもあります。 何でもかんでも手取り足取り教える過保護の時代、また、学ぶことへの意欲がない堕落の時代でもあります。子どもも子どもなら先生も先生だといった感じです。しかし、先生は教え育てるプロ、それで飯を食っている以上は何か打開策を模索しなければなりません。しかし、水を欲しがらない驢馬を無理矢理川辺に引っ張っていくのは本当に大変です。水を求めて駆け回るような妙案というのはあるのでしょうか。それが見つからないからこのような状態なのでしょう。しかし、何かしなければ事は始まりません。かつてはしなかったようなことでも、一見無駄のようなことでもチャレンジしなければいけません。 この本では、錦帯橋のある町〜岩国〜で実践した3つのことを中心にお話しします。私は、高校の数学教員ですが、次のことを行ってみました。一つ目は中学校への出前授業、二つ目は小学校・中学校の先生を対象にした「メタ理解」研修、三つ目は本校理数科の生徒を対象にした課題研究(数学探究)です。 私の研究テーマは、数学学習における「理解」です。生徒が数学を勉強するときに「わかる」とか「わからない」とかいいますが、その意味は何であるか、どんな種類があってどんな特性を持っているのか、数学教育にとって目標とすべき「理解」とはどんなものであるかを研究しています。これを「メタ理解」と呼んでいます。 これについては、スーパーサイエンスハイスクール数学分野の実践などで、高校生を対象に実践しました。しかし、これは高校生よりもむしろ小学校の教員、中学校、高等学校の数学の教員に研修として課したらよいのではないかと思い始め、その機会を窺っていました。幸運にもその機会を得て、教員がどのように「メタ理解」しているのか、していないのであれば私の研究を介して一緒に考え、それをもとにした算数・数学教育を実践してみませんかという投げかけをしました。それが私の「メタ理解」研修会の狙いでした。 それに前後して、中学校での「出前授業」と高校での「課題研究(数学探究)」を実践しました。私は高校の数学教員ですから後者を実践するのは当然ですが、前者についてはこれまで機会がありませんでした。ところが最近になってようやく中高連携教育が叫ばれるようになりました。私立などに多い中高一貫校であれば、以前から行っているでしょうが、公立校ではこれからなのです。今のような「ゆとり教育」のつけを払うには、異学校種間の連携が是非とも必要です。しかし、その必要性を感じながらその機会はありませんでした。ようやくその機会を得て、実践したのが「高校数学へチャレンジ〜ちょっと複雑な因数分解〜」というたすき掛けを題材に取った出前授業でした。 チャンスは待っているものではなく自ら作るものでしょうが、向こうから突然訪れるときもあります。待てば海路の日和ありといった感じです。 この二つの実践は、ともに平成19年に行うことができました。もちろんすぐ対応できるように準備、心づもりはしていました。 三つ目の高校での「課題研究(数学探究)」は、平成20年に実践しましたが、その対象学年は2年次で、奇しくも出前授業をしたときの中学3年生が高校2年生になったときに行いました。また、前授業を熱心に要請してくれた先生は「メタ理解」研修会にも出席をしてくれました。 このように、錦帯橋のある町〜岩国〜でのいろいろなつながりの中でこの三つの実践ができました。そのことを本書から情報発信をして、さらにつながりの輪を広げていきたいと願っています。 |
著者紹介 |
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【経歴】 広島大学理学部数学科卒業(S54.3) 広島大学大学院教育学研究科教科教育学(数学教育学)修了(S56.3) 山口県立岩国商業高等学校勤務(S57.4〜S61.3) 山口県立防府高等学校勤務(S61.4〜H3.3) 山口県立下松高等学校勤務(H3.4〜H14.3) 山口県立岩国高等学校勤務(H14.4〜) 【受賞歴】 第58回読売教育賞最優秀賞2009 第55回読売教育賞優秀賞2006 第7回啓林館教育実践賞審査員特別賞2008 第4回武庫川教育賞優秀賞2007 山口県メダル栄光(文化賞)2009 岩国優秀文化賞2010 |
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