『花泥棒』 rouge どうもおかしい、 と 思っていた 毎日少しずつ減ってゆく 僕が丹精こめた花 陽の昇りも早くなり 早起きは僕の得意技 しかし 上には上がいるものだな ……ふと、そんなことも脳裏を過(よ)ぎった それは 世界中の黄(き)唯(い)色(ろ)い花を すべて捧げたい、と 思える 邂逅(かいこう)だった 花泥棒の正体を知った僕は 生まれて初めての ひと目惚れに戸惑いながら 春の只中にただ呆然と 立ち尽くしていた―― 『春のシェイク』 pipin かざす指の先 光が遊ぶ 窓の四角い隅の所で おしゃべり好きな風が 耳打ちで誘惑する 手招きする 森の水 せせらぎは 脈に入り込んで刺激する 光の影香らせて まだ淡色のみずいろ 広がる空は きみどり色の絨毯を広げ 降り注ぐグラディーションに 春のシェイクを用意し始める |