東文彦ガイド(作品編)




東文彦についての研究はまだほとんどなされていない。文彦が病没したのは第二次世界大戦中のことであり、肺結核を患いながら書き残した作品は少ない。戦後の繁栄の中から見る時、文彦の諸作品は地味で目立たない。肺結核という題材も過去のものと思われがちである。そのため、これまで注目されることがなかったのであろう。しかしその作品には、時代を超えて私達に訴えかける何かがあると思われる。華やかで人目を引くものは案外底が浅く、すぐに飽きられる場合が多い。特に文学作品にあっては、一見地味であっても、読み手の側が積極的に関与し深く掘り下げて考える時、大きな意味を持って甦る作品は多い。文彦の作品も、そうなのではないだろうか。

文彦の作品をすべて入手し読むということは現在のところ簡単ではないが、今後の研究の進展に資するよう、作品の書誌的事項を一覧できるようにまとめ、本書を構成した。現在入手できる作品は二十三ある。本書では年代順に作品を配列し、書誌的事項と梗概をまとめた。さらに、それぞれに言及する文彦と三島他、関係者の言葉を付した。また、各作品の問題点を提示し簡単な鑑賞を試みた。鑑賞とはいえまだ浅いものであり、これを契機にしてさらに研究の深まっていくことを偏に願うわけであるが、ひとまずのところは本書を手引きにして、大学生が卒業論文を作成する等の活動には役立つのではないかと考える。東文彦という作家と作品とが世に知られることの一助となれば幸甚である。


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