日置の源流

- 備中足守藩吉田家弓術文書 -




はじめに

今年岡山大学体育会弓道部が五十周年を迎えるにあたり、OB会ではその記念事業の一つとして『日置の源流―備中足守藩吉田家弓術文書―』を翻刻出版することとなった。幸いにもOB会員各位の協力を得て、長年の努力がここに結実したものである。種々の制約から弓術関係史料全ての翻刻はできなかったが、種々の分野にわたり主たる伝書は取り上げる事ができたと思う。

編纂の経過

昭和五十六年(一九八一)頃のこと在間宣久氏が足守文庫を訪ねた。在間氏(現岡山県立記録資料館館長)は、当時岡山県史編纂室の職員として『岡山県史』の編纂にあたっており、その史料の収集調査のため、足守文庫で調査を進めていたところ、片隅で茶色の大風呂敷をみつけた。その中に「日置流目録」とか「無言歌」とかの弓の伝書とおぼしき巻物や冊子が大量に包まれていたのである。

在間氏は岡山大学弓道部のOBで、在学当時弓道部の主将をつとめた名選手だった。だから、氏はこれに敏感に反応したのである。在間氏が管理者の教育委員会に、なぜこの大量の伝書が足守文庫の所蔵になったのかを尋ねたところ、その経緯は次の通りであった。

昭和三十年代の初め頃、吉田と名乗る老人が足守の教育委員会を訪れ、
「私の家は、この足守藩で代々弓術指南役を勤めており、弓の伝書を大切に伝えてきた。しかし、この度兵庫に転居する事になり近々足守の地を離れる事になる。子供も孫も弓には全く興味がないので、これまでこの足守の地で代々にわたって守ってきた伝書も散逸するかもしれない。そうなっては御先祖に申し訳ないので、代々御世話になったこの足守の地で保管をお願いしたい。」
とのことで、教育委員会の所蔵となったものである。残念ながら足守文庫に弓に関心のある人がおらず、在間氏が指摘するまで預かったまま、手付かずの状態となっていたのである。

その後、岡山大学弓道部OB会でこの足守藩吉田家弓術文書の存在が話題にのぼり、足守文庫を訪れたり、何度も調査・解読の決議をした……


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