FRAGILE ONE




「遺書」 by 吉田群青

便箋に遺書を半分だけ書きつけて眠る
毎晩
寝る前に書いているから
常に遺書は新しいものになってゆくのだけど
どうしてだか
最後まで書ききったことはない
手元灯に照らされる便箋は
ボールペンの筆跡だけがあざやかに黒くて
ゆっくりおろした瞼の裏側に
鮮やかな色の夢が
どこからか舞いこんで
ちらちらと踊る




「言葉などいらない」 by 小川葉

汗をかいたので
洗濯して
ベランダに干す

ここは海が近いから
命の
匂いがする

書店で本を開いても
どれも白紙なので
選択は
できなかった

もう
言葉などいらない

ただ
洗濯物が乾くまで
じっと見てる

からだの一部だった
それを
じっと見てる



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