SEASONS 2008 Autumn




「土管」 by 岡村明子

青白い校庭のすみで二人手をつなぐ
土管の中
ひんやりと湿ったコンクリートの円形が
彼らの頭から足先を連続させて
皆既月食のように輝いている
静かな夜
明滅する街路灯に照らされた小さなタイルのモザイク模様が
濡れたようにきらきらと
昼間の喧騒を拭い去る

色づいた葉がためらいがちに入り口を窺う
開いているのに閉じているこの空間で
子供の恋は誰にも知られることなく
ただひっそりと
体温が伝わることを確かめあった

土管の外に
ランドセルふたつ
寒そうに
身を寄せ合って



「Fのメロディ」 by A2C

あなたに捧げる僕のうた 弦を弾いて奏でましょう
涼しげに歌う虫の音と 仄かな赤い香りをまぜて
あなたの元まで届けましょう

あなたに向けた僕の声
掠れたフラットのハーモニー
五線紙に描いた音符はまるで 鳥のよう
あなたの元へと飛んでゆく

さぁ 瞳を閉じて 耳を澄まして
さぁ 心を開いて 感じてよ

だんだん強く だんだん強く・・・
生きている気持ちを感じて

「その音が好き」と微笑ってほしい
あなたの笑顔が見たいから
あなたの好きなコードを指でなぞり

あなたに届け Fのメロディ



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