「波止場」 by 赤月るい だれかが旅に出る だれかが旅から帰ってくる それを見送るひと、迎えに来たひと 行きかう中 私はひとの波を見ていた ひとは心を入れかえようと ひとは何かを思い出そうと 旅に出るという それでも 何かを目指して旅立ったひとは それを捨ててきたようで 何かをあきらめようとして発ったひとは それをまた拾いにもどるようで みな、旅の途中 矛盾しているその姿は やけに美しかった 「天道虫」 by 夜雨 私たちは二人して 湿っぽい露地を歩いたものでした ほっそりとしたあなたの胸には 小さな真紅のブロオチが輝いていましたし 私のうすっぺらい胸には 真青に澄み切ったテントウムシが留まっていました そして憂鬱そうに、あなたは呟いたものでした 私には聞き取ることの出来ない 遠い国の、不思議な日本語(ことば)を |