僕らが見えなくなるまえに




羽毛
すすきのようにしやなかな朝
ベッドの上で伸びていく細胞と想い出に
ひとひらの羽毛

知っている限りの情報で
精一杯愛おしく思うから
境界線をなぞって
深呼吸に似た
ため息

サーカスが街にやってきたような
朝が続けば良いと
ずっと思っていた

涙が出たのは
あくびをしたからで
哀しいことなんて何一つ

吹いたら舞い上がった
ためらいながら落ちるように
穏やかな幸せに似た


何故か脳は揺れていた
余りに浅い夢の中で
はじめて夢だと気付いたとき
夢よりも現実の方が良いって確信した

浮遊するモラルと価値の儚さは
青みがかった世界で
いっそう薄っぺらく
心地の良い不安だった

法則のないような世界で
真っ直ぐ地面に立つことも出来ないで
目が覚めれば嫌でも中心に向かって張り付いている身体に
どうしようもない安心感を感じたりした

心は何色ですか

まだ覚めきらない毛細血管を
うわごとのような質問がゆっくりと駆け巡っていた

わからない

ただ
もっと白くなりたいような気がする
この色だらけの世界で
余計な色を落として
真っ白に

雪が降ればいい
そんな短絡的な願いが街を白く染めた後
雪は僕には積もらなかった

意志とは無関係に
結晶を溶かしてしまう体温は
その存在意義すら疑わしくなるほどに
寒がっていた

それでも降れよ!

溶けかけた雪に滑って転んだとき
また僕は地球に近づいた

境界線を確かめながら
似ているなと思った
それは安心とも不安とも言い難くて
ただ気が遠くなった

はじめて死を考えたように深く
はじめて愛したように高く

相容れないことの意味が
美しく街を冷やすように

僕はもう色が恋しくなっていた
溶けていく雪のように
儚く
目を覚ました

おはよう

僕の知覚出来る全てに

おはよう!


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