きらる6

( 時代 )




九月が咲く
草野春心/作


あなたは床に座っていた
(その清潔で白い色)
胸に匿名の書物をかかえて
あなたの投げかけた深い影
樹下でそれは憩っている
はじめは、
あなたの名をしっていると思っていた
あなたがわたしの名をしっていると
わたしは海辺に立っていた
さけぶ言葉のひとつももたず
九月が
あなたの胸に咲いていた





偲ばれる墓標
蒼風薫/作

白菊の歌声が
偲ぶあなたの
墓標前にて
一人雨に
濡れながら
西脇の詩集を
繰ってみる

詩のまことが
こぼれますように


紅の傘は
忘れられて
かなしく倒れて
朽ちてしまいたいと
言っている

雨ならまるで
永遠を知っているかの
ように
ひたすらに
続いてゆく

まるでわたしの
やまないなみだの
藍のように

銀のように





Girl's Dream
芥川哲也/作

おばあちゃん このおみせ かわいいよ
おじさん これ どうやって つくるんですか?
わぁ あたし こういうのが すきなんだぁ
おばあちゃん まだ こっち みてないよ
このリボンとか とってもかわいい
あっ あそこに ねこの こどもがいる
おじさん どうもありがとうございました

私が幼かった頃
近所の雑貨屋さんに通っていたときのこと
青梅から来ていたおばあちゃんと一緒に
よく見に行ったお店
まだやっているといいなぁ
お店の前を通るたびに中に入って
いつも何も買わずに見てるだけだったけど
笑顔でやさしく親切に応対してくれたお店のおじさんには
本当にお世話になったなぁ
小さな雑貨やアクセサリーなど作り方まで教えてくれたっけ
あの時からかなぁ
大人になったら雑貨屋さんになろうって決めたのは
いろいろまわり道をしたけど
まだ元気だったおばあちゃんが
「マミちゃん、お店をやるんだったらおばあちゃんのこの家を貸してあげるから
思い切ってやってごらんなさいよ」
って背中を押してくれたおかげでここまでこれたんだ
それまで貯めてきた貯金と両親からの前借で
おばあちゃんの家の一部をリフォームして
このお店を開店させたんだ
同級生の友達も応援にかけつけてくれた
そのうちの一人が今の旦那さん
辛いこともあったけど
一気に幸せが訪れたってかんじがしたなぁ

パパ このおみせ かわいいよ はいろー はいろー
ねぇーねぇー おねぇーさん
あたしも おおきくなったら かわいいおみせを やりたいんだけど
どうやったら できるように なりますか?




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