文学倫理学批評の視野における日本の平安朝前期物語の研究



データ

作者 訳者 作品の分類 ページ数
尹蕾
(イン・ライ)
卜小恬
(ボク・ショウテン)
国文学 350

ISBN 書籍サイズ 定価(税込・円)
9784864203333 A5 3,850




概要
時代や国境を越えて読み継がれるべき古典文学研究の新たな金字塔!

『竹取物語』『伊勢物語』『落窪物語』――平安前期を代表する三作品を「文学倫理学批評」という新たな視座から鮮やかに読み解く本書は、物語文学の奥底に流れる倫理の構造をあきらかにし、日本古典文学の再評価を促す画期的な試みである。

皇権と文学の関係を読み解く「皇権倫理」、恋と人間の自由意志を問う「愛情倫理」、親子の力関係を浮き彫りにする「家族倫理」、そして階級と価値観が交錯する「人間関係倫理」――四つの軸を通して描かれるのは、従来の古典解釈を超えた、文学を通して見えてくる時代精神と人間の本質である。

物語を倫理のレンズで読み解くことで見えてくる、日本人の愛と忠誠、自由と従属、尊厳と依存。……文学研究の伝統を革新へと導く、今こそ読まれるべき一冊。

著者コメント
私の拙作『文学倫理学批評の視野における日本の平安朝前期物語の研究』は 2021 年に初版を出した。当時は博士論文として刊行されたもので、学術の道に初めて足を踏み入れた若い私が、指導教官李俄憲教授のご指導の下で、日本古典文学に対して行った浅はかな探求に過ぎない。本書では『竹取物語』『伊勢物語』『落窪物語』を研究対象とし、文学倫理学批評の視点を用いて、平安朝前期の物語に含まれる倫理観念と社会文化を分析している。私自身の学識と能力の限界により、本書には多くの誤りや不備があるかもしれない。学界の先生方や読者の皆さんには、ぜひご指摘いただければ幸いである。

今回、日本語訳版が出版されることができたのは、博士時代の後輩である卜小恬博士の多大なる貢献があったからである。彼女は日中両言語に精通しており、日本文学にも深い造詣がある。翻訳の過程では、難解な学術用語を正確に日本語に訳しながら、日中文化の違いも考慮し、日本の読者が正確に本書の内容を理解できるように努めていただいた。この仕事は細かくて煩雑で、高度な専門性と根気が必要であるが、彼女は情熱的で厳密な態度で、この困難な任務を見事に遂行した。ここで、彼女に心から感謝の気持ちを表したいと思う。彼女の努力がなければ、本書は言語と文化の垣根を越えて、日本の読者に届くことはできなかった。

日本の平安朝前期物語文学は、日本古典文学の宝庫に輝く明珠であり、当時の社会の倫理道徳、価値観、生活のあらゆる面を担っている。中国の研究者として、文学倫理学批評の視点からこれらの作品を研究し、その成果を日本語訳版として日本の読者にお届けできることは、光栄に思う一方、少し心配もしている。日本の学者の皆さんは、本国の古典文学研究の分野で高い学問的な造詣を持っており、私の研究はかすかな試みに過ぎないかもしれない。しかし、私は本書が日本の読者に新しい考えをもたらし、日本古典文学の研究に少しでも貢献できることを心から願っている。

言語と文化の交流は、異なる国の人々がお互いを理解し、尊重することを促すことができる。この日本語訳版が日本の読者に愛されることを心から願っており、また、日中両国の学者が日本古典文学研究の分野で交流する架け橋になれば幸いである。もし、これによって日中学術交流と文化交流が促進されれば、私にとって最大の光栄である。(『日本語版の前書き』より)

目次
日本語版の前書き

序言

まえがき


緒論
    一、問題提起
    二、国内外の先行研究
    三、革新点と研究意義
    四、研究方法と基本的な考え方


第一章 平安朝前期物語における皇権倫理

第一節 平安時代の皇権倫理的環境
    一、平安時代における政治形態の変遷
    二、「神権」から「皇権」への変遷
第二節 『竹取物語』における「皇権至上」の倫理観の構築
    一、かぐや姫の二重の倫理的身分――「仙性」と「人間性」の兼ね備え
    二、五人の貴公子の倫理的身分――「貴族」と「豪族」の違い
    三、皇帝の倫理的身分の認め――「現人神」と「仙人」の長所と短所
第三節 『伊勢物語』における「皇権衰退」の倫理的問題
    一、二条后の倫理的選択――「皇権」への反逆
    二、伊勢斎宮の倫理的タブー――「神権」への脅威
    三、在原業平の倫理的ジレンマ――「血統」への自信のなさ
第四節 『落窪物語』における 「皇権没落」の倫理的パラドックス
    一、落窪の君の倫理的身分――「王女」の没落
    二、道頼の倫理的身分――「摂関家」の隆盛
    三、「皇権没落」の倫理的矛盾――「摂関政治」の実質
まとめ


第二章 平安朝前期物語における愛情倫理

第一節 平安時代の愛情倫理的環境
    一、『古事記』の「色好み」のヒーロー
    二、平安時代の結婚恋愛倫理
第二節 『竹取物語』における「愛情至上」の倫理構造
    一、五人の貴公子の求婚の拒絶――純粋で暇のない愛の求め
    二、天皇の求婚の受け入れ――平等に基づく愛への憧れ
    三、かぐや姫の結婚しない謎――「仙」と「人」の愛情倫理的タブー
第三節 『伊勢物語』における「放蕩」な不倫の恋
    一、姉妹への求愛――「血族」に触れる倫理的タブー
    二、人妻との私会――「結婚倫理」の踏みにじり
第四節 『落窪物語』における 「理性的な愛情」の倫理的解構
    一、欠落した愛情倫理の啓蒙――落窪の君の受動的な内在的原因
    二、愛情における理性的意志――道頼の「色好み」の二面性
まとめ


第三章 平安朝前期物語における家庭倫理

第一節 平安時代の家庭倫理的環境
    一、母系社会の残存形態
    二、平安時代の婚姻制度
    三、平安時代の「孝」の実態
第二節 『竹取物語』における 家父長制未形成期の倫理混沌
    一、かぐや姫の自主的な配偶者選択権――家父長制の未形成
    二、かぐや姫の倫理的矛盾――日本的な「孝」思想
第三節 『伊勢物語』における 家父長制の形成過程における倫理的衝突
    一、家庭における倫理的衝突――親の「主婚権」と子の「婚姻の自由権」
    二、「母と子の絆」の本質――子供と母親の密接な関係
第四節 『落窪物語』における 「父権」の欠如による倫理的問題
    一、「父」の不在と復帰――源忠頼の倫理的身分の確認
    二、「母親」と「恋敵」――継母の倫理的身分の矛盾
まとめ


第四章 平安朝前期物語における人間関係

第一節 平安時代の人間関係の倫理的環境
    一、社会階級の固定化
    二、主従関係の緩み
    三、男色文化の芽生え
第二節 『竹取物語』における「庶民を貶める」倫理意識
    一、給料をもらう工匠と悪徳商人――貴族と庶民の倫理的衝突
    二、大伴大納言の主従関係――倫理的衝突と倫理的選択
第三節 『伊勢物語』における 「弱者への同情」の倫理的傾向
    一、敗者の団結――不平等な友情
    二、同性間の倫理的混乱――曖昧な男色関係
第四節 『落窪物語』における 「典型的な人物」の倫理的価値
    一、典薬助と面白の駒――負の道徳的価値の現れ
    二、阿漕と帯刀――道徳的価値の現れ
まとめ


おわりに

参考文献

あとがき


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