著者 | 翻訳者 | 作品の分類 | ページ数 |
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田上富男 | ‐ | 教育学 | 228 |
書籍サイズ | 定価(税込) | ISBN |
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A5 | 2,640 | 978-4-86420-314-2 |
概要 |
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小中高校の校長が学校を経営する際に重要となる70のポイントを一挙公開! 三年間に及ぶ新型コロナウイルス感染症は、学校に様々な形で影響を及ぼしました。例えば、感染拡大の第一派が襲来したときには、学校は三か月ものあいだ臨時休業となり、授業日数が大幅に削減されました。学校が再開された後も、感染リスクを考慮し教育活動が制限されたため、最も懸念されたのは子どもたちの学力の低下でした。 そのため学校では、授業時数を確保し、学びを保障して学力を維持することが最大の命題となりました。本市(栃木県真岡市)においては、どこの学校でも、校長先生の積極的な働きかけにより、誰もが「学びの保障、学力の維持」を意識して、本気になって取り組みました。その結果、全国学力・学習状況調査、県版学力テスト、真岡市総合学力調査ともに、これまでにない良好な成績を収めることができました。 やはり、学校の全教職員が結束して取り組めば、強力な力を発揮し、結果となって現れるのです。そして、その成功体験の積み重ねが教職員の自信と力となって、更なる教育活動の充実・発展に働いていくのです。私にとって、コロナ禍での貴重な体験となりました。 さて、現在の教育界では、教育改革という美名の下、「学校改革」や「学校を変える」などという言葉が跋扈し、校長はあたかも学校を変えることが使命のようです。もちろん、変えなければならないところがあれば変えるのが当然ですが、それが全てではありません。 そもそも、教育とは地道な営みです。教職員の地道な努力によってはじめて結果が出るのが教育なのです。学習指導要領の趣旨から言えば、各学校が、創意工夫し特色ある教育活動を展開して、子どもたちに知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」を育むためには、冒頭のコロナ禍での取組のように、教職員が一致結束して地道に取り組むことに尽きるのです。そして、それを全責任をもって成し遂げるのが校長の仕事です。ですから、学校経営も地道な営みであって、決して学校を変えることが必然というわけではないのです。学校教育目標の実現のために、校長の描いた学校経営構想や経営方針、経営計画に基づいて、教職員をひとつにまとめ、着実に学校経営を進めていくことが何よりも大切なのです。 ただし、残念なことには、校長が営む学校経営には差があって、その成否も分かれてしまっているのです。私は教育長として六年間、市内の小・中学校を見てきました。学校の外から、教育長という立場でそれぞれの学校経営を見ると、その違いがよく分かります。 では、その違いとは何でしょうか。ひとことで言えば、校長が教職員や保護者、地域等から信頼され、教職員をひとつにまとめ着実に学校経営を進められるかどうか、ということです。私も校長経験がありますので、自分が校長として学校経営に没頭しているときには分かりませんでしたが、教育長という立場で、各校長の采配を客観的に見ると、それがよく分かります。 そこで本書では、そういった差ができるだけ出ないよう、実際に学校経営を営むうえで、是非とも押さえておいてほしいことを70項目にまとめ紹介しました。これらの項目は、こうすれば教職員や保護者、地域等から信頼され、ここのところを注意すれば失敗しない、うまくいくといった学校経営におけるポイントを、市内の小・中学校の校長先生方に教育長として発信してきたものです。 私が学校経営に携わって取り組んだことや経験したことの中から、教育長というフィルターを通して確かなものと認められた取組や、そこから得た校長としての見方・考え方・心構えが中心となっています。私は、対照的な二つの中学校で校長をしましたので、そこで多くのことを経験し学びました。また、かつて仕えた校長先生や勤務した学校、そして現在の学校等からも多くのことを学び、貴重な経験をしています。さらに、新型コロナウイルス感染症をはじめ、世の中では様々な出来事が起こっていますので、そこで得られた教訓等は、学校経営においても重要な役割を果たします。そういった内容についても取り上げています。どの内容も、地道な営みである学校経営を着実に進め、信頼される学校をつくるために大切な見方・考え方・心構えと考えます。 先行き不透明な時代にあって、今こそ、地に足をつけた確かな学校経営が求められていることは異論のないところです。本書が、そのためにいくらかでも参考になれば幸いです。 (『まえがき』より) |