教育と大学と物理



データ

著者 翻訳者 作品の分類 ページ数
山田弘明 教育学/物理学 142

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 1,980 978-4-86420-300-5




概要
本書は、物理と教育と大学に関する著者の私的なメモである。新潟大学工学部での約24年間と、日本歯科大学での約10年間の物理、数学の教育を基に記してある。前半の1章と2章は学生の頃から40年以上関わる大学での教育について感じることを整理した。本書の後半の3章はCOVID-19により2-3年間行った非対面講義などについて、4章は2022年度に約35年ぶりに担当した物理実験について、経験したことを著者個人のイメージを中心に記述したものである。

2020年度と2021年度の2年間の電磁気学のZoom講義はスライドを用意し、その場で部分的に書き込みをしながら問いかけや対話をして進めたが、例年の板書による対面講義と比べて内容は8割くらいしか進まなかった。同じ科目でありながらコロナ前に比して評価も甘くなったことは否めない。ただ、オンラインでは学生の活発な議論はなかった。そして、2022年度から多くの大学で対面講義が再開した。一方向的なビデオ講義を視聴する方が倍速再生やリピートができて内容の理解に対し効率も上がるし定着もする、という声見も少なくないようだ。そういった学生たちは教室での90分の講義には耐えられないのである。本来の大学は自由な議論の場であり、それを体験し味わって教養を身に着ける場である。その可能性が高くなるような設定を教員が行うことが大学の役割でもあろう。

著者は理論物理の研究をしているので、日頃は論文の読み書きや数値計算が中心である。実際の実験は大きくはある程度わかっていても、やってみないとわからない不思議な部分もあり、大学での学生実験の担当であっても新鮮な体験だった。学生の物理実験を通してモノや現象に直接触れることができた。さらに、実験・観察では講義ではできない学生との直接のやりとりもあるし、自らこんな簡単に見える現象でもよくわからないという実感もできる。しかし、実験の担当を通してもうひとつ実感したことがある。実験も合理化して効率を上げたり精度を上げようとすると、その技術的側面に気を取られ、背後にある身近で素朴な自然現象から遠のいてしまうという矛盾である。この矛盾は、環境問題や農業問題など様々な人類が出会うことが避けられない課題と結びついていると改めて感じたことが本書執筆のきっかけの一つになった。

各章や付録はそれぞれ独立に読むことができる。付録は主に物理(理科)の実験に関する内容である。付録B(光の干渉)、付録C(電子の比電荷)と付録D(粘性抵抗)は大学初年級で行われる物理実験なので興味のない読者はスルーして構わない。付録E(お湯の冷め方)と付録F(紙風船の落下)は誰でも比較的簡単に実行できる身近な実験である。他には、身近なものとして付録G(ダイエットとエネルギー)、付録H(地磁気測定)を入れてある。

(『まえがき』より)



目次
第1章 大学における教育
 1.1 はじめに
 1.2 大学とは何か
 1.3 大学での教育と研究
 1.4 哲学・思想の重要性
 1.5 科学と社会の問題
 1.6 温暖化問題
 1.7 1章のまとめ
 参考文献

第2章 現場でのこと
 2.1 理科離れ・物理離れ
 2.2 環境問題・農村問題との関連性
 2.3 「大学という現場」を読んで
 2.4 2章のまとめ
 参考文献

第3章 非対面講義
 3.1 COVID-19と教育のオンライン化
 3.2 オンライン化で失うもの
 3.3 おまけ:コロナ対応と実測
 3.4 3章のまとめ

第4章 実験実習
 4.1 これまでの実験実習
 4.2 物理実験について
 4.3 実験の精度問題
 4.4 簡易実験の例:重力加速度の測定
 参考文献

付録A 学生のモチベーション

付録B 光の干渉実験
 B.1 波の干渉と回折
 B.2 レーザー光
 B.3 具体的実験に向けて
 B.4 おまけ:光波の分光や回折
 B.5 式(B.1)の導出
 参考文献

付録C 電子の比電荷
 C.1 比電荷の意味
 C.2 力の大きさ
 C.3 結果を先に使ってみよう
 C.4 具体的実験に向けて
 C.5 この実験リポート作成についての注意
 C.6 おまけ:余裕があれば考えよ
 C.7 式(C.1)の導出
 参考文献

付録D 粘性抵抗の実験
 D.1 粘性(viscosity)の意味
 D.2 ハーゲン・ポアズイユの法則とその意味
 D.3 オストワルドの粘度計による実験
 D.4 データの整理と課題
 D.5 余裕があれば考えてみよう[考えることで余裕をもとう]
 D.6 水の特異性
 参考文献

付録E お湯の冷め方
 E.1 温度の測定
 E.2 計算式
 参考文献

付録F 紙風船の落下
 F.1 終端速度
 F.2 終端速度の計算
 F.3 終端速度の実験

付録G 代謝と仕事
 G.1 代謝系の計算
 G.2 代謝率など

付録H 地磁気の計測実験
 H.1 地磁気
 H.2 地磁気の測定

索引


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