SEASONS 2010 Spring




『花泥棒』  rouge

どうもおかしい、
と 思っていた
毎日少しずつ減ってゆく
僕が丹精こめた花

陽の昇りも早くなり
早起きは僕の得意技
しかし 上には上がいるものだな
……ふと、そんなことも脳裏を過(よ)ぎった

それは 世界中の黄(き)唯(い)色(ろ)い花を
すべて捧げたい、と 思える
邂逅(かいこう)だった

花泥棒の正体を知った僕は
生まれて初めての ひと目惚れに戸惑いながら
春の只中にただ呆然と 立ち尽くしていた――



『春のシェイク』  pipin

かざす指の先
光が遊ぶ
窓の四角い隅の所で
おしゃべり好きな風が
耳打ちで誘惑する

手招きする 森の水
せせらぎは 脈に入り込んで刺激する

光の影香らせて
まだ淡色のみずいろ

広がる空は
きみどり色の絨毯を広げ
降り注ぐグラディーションに
春のシェイクを用意し始める



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