異国のお姫様




ポインセチア
花といってもおかしくない深紅のポインセチア
柔らかな布のような葉っぱを見て
あるものを思い出した

もう二五年も昔のこと
きみが胸に付けていた深紅のネクタイ

きみはとうに結婚して何処かに行ってしまったのだろうけれど
あのとききみが胸に付けていた深紅のネクタイ
あれもきみと一緒に何処かに消えてしまったのかな?

それとも 誰かの胸を飾っているのかな?


後ろ姿
卒業を間近に控えた中学三年の秋
目の前に 突然きみが降り立つことがあった
新体操をするときのような軽やかな足取りで
私の前を歩き始めた


きみは時々振り返りつつ小走りに歩くので
私は目のやり場に困った
校門までの道のりを きみの後にくっついて
そうやって どきどきしながら歩いていった


きみは乙女心の気紛れで
永遠の後ろ姿を私の脳裏に刻み込んだ

人が淡い恋心をいだくのは 成就することを願ってばかりではない


思い出の場所なんて
車でちょっと走れば いつでも行ける
でもね 時間を持て余してパチンコ屋に行くことはあっても
きみの方へ ゆけない


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