SEASONS 2009 Spring




【春はあけぼの】 by 落合朱美

息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた

夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき
あなたの息遣いを
耳もとちかくに感じて
頬があつくなった

もうすぐ
辛夷のつぼみが綻ぶよ
椋鳥がそう告げて
ほの朱い空に飛び立ち
わたしはまだ冷たい指先を
あなたに預けた

今日からの季節を
春と呼ぶことにしましょう
そうしてお昼には
わたしたちは陽溜りに
会いにゆきましょう

頬を寄せてささやいたら
あなたの指先に力がこもり
わたしはほっと安堵して
もうすこしだけ
淡い微睡みに落ちてゆく



【春色小唄】 by 蒼風薫

桜の木に棲む小鳥のこころ
恋を待ち待ち小鳥が囀る
桃色散る散る小鳥の上に
囀る声もピンクに溶ける

桜の木の下少女のこころ
恋を待ち待ちスケッチブック
桃色散る散る少女の上に
取り出す鉛筆ピンクを選ぶ

春は歌うよ恋の唄
桃色小町と小鳥のために
桜の花びら惜しげもなしに

春は待つ子の恋の街
桃色小町と囀る小鳥
桜散る散る惜しげもなしに



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