不揃いな心




指輪

君の希望なら 叶えてあげたいけど
こればっかりは 君の理解しだいだわ

そういえば昔 徹夜で語り合ったわね
男女間に 友情は存在するのかって
酔っ払ってて 結論は出なかったけど

私はあると言うし 君はないって言う
堂々巡りの 滑稽な議論だったわね
でも私も実は ないって思ってたのよ

認めなかったのは 単に怖かっただけ
紛れもなく私と君が 男と女だから
君と会う理由 失ってたかもしれない

でも考えてみたら 変だと思うのよね
友情と愛情と 並べてもいいのって
愛情って 異性だけに向けるものかな

私は愛って もっと大きいと思うのね
君のこと 愛してるって感じてるわ
でも世間とは それの意味が違うのよ

私が感じる愛には 性別は関係ないの
簡単に言えば 人としてっていうか
もっと突き詰めれば モノに対しても

その存在自体が たまらなく愛しいの
愛着って言葉 あれも一緒なのよね
私にとって 愛情ってそういうものよ

君に分かってと 言う気ないんだけど
でも理解しないと 難しいと思うわ
忘れないでいて 私に愛を求めるなら

だから君は 真剣によく考えてみて
それでもいいなら 指輪を受け取るわ


署名

駅前の交差点で、声をかけられた。
「反戦の署名、協力をお願いします」
僕は手を振って、足早に通り過ぎた。
遠く聞こえたのは、舌打ちだった。

反戦を訴えるのには、反対しない。
自らの強い意志で、行えばいい。
でも不参加者を、疎むのは可笑しい。
何処かで歪んでると、そう思った。

僕だって、戦争に賛成はしてない。
署名しないのとは、関係がない。
死にたくないし、死なせたくもない。
手段として、選ばないだけだった。

歩道橋の広場で、声をかけられた。
「反戦の署名、協力をお願いします」
僕は頭を下げて、足早に通り過ぎた。
反戦の呼びかけを、背中で聞いた。

僕は心の中で、ただ平和を願ってた。


代償

汚れたことは 僕が全て引き受けるから
どうか君は いつまでも笑顔でいて下さい

馬鹿だと罵られても 僕は貫き通します
君の身代わりに 苦しみを背負い込むこと
憐れみなんて 僕には必要もありません

愚かと蔑まされるのも 僕には本望です
君の前から消えて 一身に責めを負うこと
代償さえあれば 他には何もいりません

降りかかる火の粉は 僕が全て被るから
君は無垢なまま どうか笑顔でいて下さい


別人

街で今日、別人の君を見かけました。
見慣れない服、僕の知らない君でした。

それでも僕には、直ぐに分かりました。
紛れもなく君だと、気がつきました。
遣る瀬無いほど、君のことが好きです。

街の君は、とても華やいでいました。
軽やかな足取り、晴れやかな顔でした。

情けないほど僕は、憂鬱になりました。
君の微笑みを、久しぶりに見ました。
そんな僕だけど、君のことが大切です。

街で今日、別人の君を見かけました。
隣にいたのは、僕の知らない人でした。


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