「月(セレネ)の舞踏会」 by 竹内アリス 西の空を飾るアルクトゥルス 一等星が輝く夜空 舞台のシュプレヒコールが 余韻に変わり リサイタルの幕が下りたなら 黒いドレスを翻し 貴方に駆け寄り 目隠しをしましょうか 「楽譜が見えないよ」 そう言いながら しなやかに黒鍵を操る指先 私が音符に零れたら 貴方は私を奏でるの カーテンコールの舞台裏 しなやかに舞踏会が始まるわ ダンス ダンス ダンス 今宵(こよい) 貴方の旋律に酔いしれて… 「夏の嵐」 by 竹内アリス パラドックスが仕掛けた嵐 部屋を飛び出し 駆け抜けた まさか あれは だけど------------ 息が切れるまで走り続けた 鍵をかけた 何もかもに 見ていた 誰かが 私のことを------------- 翳(かげ)りゆく雲にこの身を委ね 反芻(はんすう)した 思いのままに 信じていた そして 愛していた----------- 迫り来る音に心をくくる 翻弄されないようにと やさしい微笑みも どんな言葉にも 甘い声さえも 私を乱さぬようにと ノックの音にドアを開けた 愛の言葉と 横槍の雨が 頬をぬらして動けない しゃべれない 夏の嵐は激しすぎるから だけどもう 私を惑わしはしない |