「道」 牧本京一 僕の部屋から見える 一本の道に 死が 骨の様に 白く とがって 突き出している 毎夜 決まってそこで 人が 夢の様に ころぶ 「オイル」 はるな 言葉はしめっていたがよく燃えた ガス・スタンドの男と 寝てきたせいだろうか 「紙の種類」 草野春心 膝を折って 床の上に散らばった 数枚の紙の、種類をかぞえていた たえがたい白さは 閉じたドアを容易くすりぬけ 光へと落ちぶれ 痩せた手の甲にふれる 「RE:」 そらの珊瑚 あいかわらず指がしびれている 十本の神経のうち 一本が不通になっているかんじ 寒いとそれが 二本、三本になってゆく 包丁は持てるけれど 皿をすべらせ今月すでに二枚割っている 皿が宙を舞うときはまるでスローモーション 地に落ちるまでのありようが一篇の詩のようだから 粉々になった欠片を集める時はいつもわたしを 哀しみの中心にいる気にさせる 音信不通になった彼らの RE:は ない 「少年と空」 邑輝唯史 空の孤独を 本の中で知った少年 都会の中で空は 壁と壁の間に引きこもり 草原の音楽を耳に当てて聴いている 少年の孤独を 雑踏の足音の中で知った空 都会の片隅で少年は 人と人の間で迷子になって 耳をふさいでうずくまったまま |