SEASONS 2015 Spring




「畜」 by だいち


植物の繊維でできた糸で括られた鋼鉄の皮膚
許されるということ
怒りをぶつけることもある遠慮なく
血のあらそい
核シェルターのなかで過ごす夕べ
何枚ものドアを
難解な質問に正答して潜り抜けても
そこが正しい場所か最後までわからない
ラヴという言葉が
不似合いな関係
間違ってもノーベル平和賞には推挙されない
外から分らないから
その存在が結束する
誰を訪ねていけば
確証が得られるのだろう
ただ食するだけだ
それを


「春の宵」 by 月野あおい


春の宵に浮かぶ
淡く透明な月が
星屑に紛れてくずれていく
あなたと私
日月に似ている
柔らかな唇に
真実を重ねてきた
宝物にしていた赤い糸玉を
あなたの足元に
放ってみる
赤い糸に
宵に散る桜の
花びらがからんで
私の存在を伝えてくれる
この春
赤い糸玉は
あなたの
腕の中でほどけていく



書籍の購入方法

本棚ページ

詳細ページ

トップページ