『レッド・シューズ』 花/作 レッド・シューズが 欲しかった パターン化した 悪意と 罰せられない 暴力を 弱い者に 小出しして 晒した恥を 省みず 自身の闇を 肥大させ 死ぬまで 踊り続けられる レッド・シューズが 欲しかった 『日本の男の子』 ごくろう君/作 僕らは寂しいことを寂しいと言わず つらいときにつらいと言わず 怖いことを怖いと言わない そのようにしつけられた 日本の男の子です だから僕らは 寂しいことやつらいこと 怖いことがあってもそれを 違う言葉でしか 伝える事のできない 日本の男の子です 『調剤室で』 そらの珊瑚/作 たとえば 悪意であったなら オブラートに包んで飲み込む たとえば 優しさであったなら 丁寧に蒸留したあと 春色のカプセルにして 冬に打ちひしがれた小鳥のために 蒔いておく たとえば 希望であったなら 忘れることのないように アルコールランプで温めて 粒子にしたのち 世界に とばす |