きらる4

( ぼくたちの夏 )




私という名の朝

芥川哲也/作
生まれる前は
種のように 何もかもが
自由に動きまわれた
今は
根のはえた野花のように
そこにじっとしている
身は自由でも
心は(いつも)そこにじっとしている

けれども初夏

はるな/作
さみだれは
あっという間に食いつくされてしまった

季節の名のつくものは
だいたいひとがむらがって
食いつくしてしまった

けれども
初夏
涼しくわらう目元に
わずかに残されたおさなさにはだれもさわれなかった
自然にただただうしなわれるだけのものには
だれもさわれなかった

小鳥

邑輝唯史/作
都会の人々が
いっせいに蝋燭に
明かりを灯したその夜

ひとつの灯が
消えた

わたし…
それっきり
くちびるは動こうとは
しなかった

友人の一人は
彼女の瞳は笑っていたと言い
別の友人の一人は
哀しげだったと言う

帰り際
それぞれ彼女との思い出を語りながら
夜の暗闇に散って行った

一人の青年が
小枝に止まっている
小さな鳥に気付く

そして
つぶやいた

君だね


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