立ち読み




猫聞いて

はるな/作
猫 聞いて
きのう わたし
乗り越えた柵
おきたらまた
目の前に柵
猫 ねそべって
聞いてない
あした わたし
終わりをみに
いこうかな
猫 おまえ
やさしいひとに
拾われなよね

こんにゃく

邑輝唯史/作
どんでん返しの日常の繰り返しで
あわてて僕は
鍋から落ちそうになったこんにゃくを拾おうとする
わかっているのかな
この僕を
こんにゃくはぬゆりと簡単には掴めない
のっぺらぼうで無愛想
角がつんとしてないのが
おそまつ君なみの愛嬌に思えたりして

大根 はんぺん ちくわ たまご きんちゃく つくね
みんな黙ってこらえている
ぶくぶく芯から身を煮えたぎらせている
結局は喰われてしまう運命なのに
それでもこんにゃくは
馬鹿なのか
何か御用ですかみたいな顔して

こいつは
明日も生き延びそうだ

弔い雨

そらの珊瑚/作
雨が降っているのかしら、と君がつぶやく

君のつぶやきは
答えを求めている時と
そうでない時があるので
それを聞き分けるのが
とても微妙であるけれど
肝心なのは
語尾のニュアンスである
語尾が蝶のはばたきのように
心もとない時は
黙って僕は見送るし
カッコウの囀りのように
饒舌な時は
巣の中の(他人に抱かせた)答えを探してみるのだ
手をかざして雨の粒を受け止める

雨だね

雨は
こうして地中に埋まっている全ての屍体を弔っていく

白い画用紙に
白いクレヨンで
君が雨を描いている
透明のクレヨンが売ってないの、と君がつぶやく
今度コートジボワールの画材屋さんで探してみようと
僕は答える

弔いの絵は
雨のように透明であるべきで
余計な色は邪魔になるのだろう


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