【小鳥のおしまいの日】
ある夏の日の
向日葵の黄唯色のふるえる夕空の下
巣を忘れてしまいたくなった一羽の淋しい茶色の小鳥が
啼いていた
なぜ この時間になると
わたしは帰らなくてはならないのでしょう
誰もが忙しなく 小鳥は相手にされなかった
さらに、啼く
なぜ わたしには翼があるのでしょう
その刹那に通りがかった風が驚いたように
凪いだ
それを知ると小鳥はなおのこと啼いてやまない
そのうちにすっかりと暮れてしまって
小鳥には何も見えない闇となった
理由はもうどうでもいいのです
わたしはわたしの巣に帰りたいのです
手遅れで
野良の猫の仕業であろうか
次の朝の陽光の許に再び
淋しい茶色の小鳥がさえずって遊ぶことは
なかった
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