アメリカのレイオフ



データ

作者名 作品の分類 ページ数 書籍サイズ 定価(税込)
河清真実 小説 274 A5 1,944

ISBN
978-4-901351-42-3



概要
『アメリカの管理者』の時代から数年を経ている。

山本が出張で訪れるアメリカ東海岸の会社も、引き受けるプロジェクトの変遷と共に移り変わっている。

今回は、電子製版システムに日本語機能を開発するプロジェクトの最終段階で、開発プロジェクトの責任者として部下一人を伴い、ボストン郊外のウエイクフィールドにあるザイサイト社を訪問することとなった。日本語機能の開発プロジェクト自体は、残すところ、カナ漢字変換機能を組み込むだけの段階まで進んでいた。今回の出張は、ザイサイト社での開発作業の経過を見て少しでも開発完了を早める意図から、実状より多少早めの出発となってしまった。却ってそれが裏目に出て、当初10月中旬から1ヶ月の予定で出張したものが、重要な問題を発見して、それを解決しなければならない事態ともなり、滞在が予定より半月以上も伸びる結果となった。その為、11月末のサンクスギビングの休日もアメリカの本場で過ごさざるを得ないことになってしまった。

現地でのレンタカー使用が会社の認可するところとなり、山本のアメリカ出張の有り方も、様変わりし、更に、長期出張の経験も重なって、山本は駐在員と同レベルでの行動が可能となっていた。それ故に、本来の開発プロジェクト推進の仕事以外に、アメリカ滞在中に日本から出張者があるたびに、そのアテンドの仕事も命ぜられるようになっていた。

ザイサイト社は、電子製版システムを開発して販売する中堅の会社で、大手商社鷹島系の専門商社である鷹島エレクトロニクスを通じて、日本への進出も二年前に果たしており、更に日本語機能の組み込み要求もまじめに取り上げ、2社の共同作業を通して、売り上げ増を図ろうとした。2年越しの鷹島エレクトロニクスとの共同作業が稔り、その開発全体の八割方を完成させた。

時は、年明けの1月に湾岸戦争が勃発する直前の1990年の年末が近づく頃、アメリカの景気も低迷していた。その時期に、ザイサイト社も、突然商談キャンセルに見舞われ、手荒い手段を用いてそれを乗り越えていかざるを得なくなった。身近に不況を感じ取っていたはずのザイサイト社の社員にとっても、それは、青天の霹靂に近い出来事であった。そればかりでなく、日本語開発プロジェクトの今後にも及ぶ、ザイサイト社の形振りかまわぬ断行であった。その現場に山本たちは直面した。

そのようなアメリカの経済不況を他所に、日本からは好況の意識のままの旅行者が次々に送りこまれ、観光に明け暮れる姿があった。山本がアメリカの不況を感じ取りながらも、そのような旅行者の世話役を淡々と勤めていた矢先のことであった。

1990年代、アメリカ・ハイテク会社と日本の専門商社間の、日本向け商品化の共同作業の過程で展開する人間関係の機微を描いた作品である。読みながら、ニューヨーク観光、ボストン観光のオーソドックスを楽しむことができる。


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