せんせのたまご 別冊

せんたま研究室日記




データ

編者名 作品の分類 ページ数
白瀬浩司 教科教育学 439

ISBN 書籍サイズ 定価(税込・円)
978-4-86420-209-1 A5 2,750




概要
『物語・教材分析と創作』(せんせのたまご)を産み出すバックヤードがここに!



物語の教材分析や童話創作に取り組む学生たち。本書は、保育者・教育者をめざす「せんせのたまご」たちの、時に真摯に、時にまったりと過ごす研究室での日常を、14年にわたって書きとどめたものです。

いま研究室に所属する現役学生を除けば、日記に登場する多くの「せんたま」たちが、既に保育・教育現場へ巣立ち、「せんひよ」あるいは一人前の「せんせ」として活躍しています。

本書を読み進めると、「おいおい、そんなことで、本当に先生になれるのか?」と思わずツッコミを入れたくなるような挙動も散見される(いや、むしろオンパレード)でしょうが、課題に悪戦苦闘し、日常の様々な雑事に向き合う中で、彼女たちが可愛らしくも頼りない存在から、少しずつ頼れる存在へ成長するさまも浮かび上がってくるはずです。

目次

第一部 研究室日記 子・丑の巻

第一章 2003年度・子の巻(1)
第二章 2004年度・子の巻(2)
第三章 2005年度・丑の巻

第二部 研究室日記 寅・卯・辰の巻

第一章 2006年度・寅の巻
第二章 2007年度・卯の巻
第三章 2008年度・辰の巻

第三部 研究室日記 午・午・未・未の巻

第一章 2010年度・午(短大生)の巻
第二章 2011年度・午(四大生)と未(短大生)の巻
第三章 2012年度・午(四大生)と未(四大生)の巻

第四部 研究室日記 未・申・酉・戌・亥・子の巻

第一章 2013年度・未と申の巻
第二章 2014年度・申と酉の巻
第三章 2015年度・酉と戌の巻
第四章 2016年度・戌と亥の巻
第五章 2017年度・亥と子の巻


あとがき


著者コメント
本誌は、年一回のペースで刊行中の教育系同人誌『せんせのたまご/物語・教材分析と創作』(通称『せんたま』)の別冊として、まとめられたものである。

ただし、既に第六集を数える『物語・教材分析と創作』は、私のゼミに所属する学生たちの学びの成果であり、次年度の後輩たちへ大学の一年次講座で用いる国語科教育講座の教科書として手渡されるという、いわば《公》的な性格を帯びているのに対し、本誌はそのテキスト作りに関わる学生たちの研究室における姿を書きとどめた、まさに《私》的な日記にほかならない。だから、『せんたま』の産まれるバックヤードを知るといった意味合いもなくはないものの、実際のところ、本誌を楽しめる読者は、ほぼ当事者たちのみであることは疑いなきところだろう。

2003年4月に九州女子短期大学初等教育科に赴任して以来認めた瑣末な日々の記録も、14年続けるとそれなりの量となった。当初、『せんたま』の付録として掲載していた『研究室日記』は、私が2011年4月より九州女子大学人間科学部人間発達学科に異動となり、『物語・教材分析と創作』第一集を刊行した時から紙媒体(書籍)としては日の目を見ていない。それを、今回、既刊分と共に取りまとめて刊行することにしたのは、14年間にわたり勤務した九州女子短期大学・九州女子大学をこの3月末で去るという、私自身の事情によるものだ。

ホームルームのない短大での学級運営、ゼミ運営の一助とすべく、2003年度より携帯電話向けサイトを使って『学級通信』を発信した。500字という字数制限のあるコンテンツは、当初《連絡事項》と《研究室》であった(後者は私の日記である)が、2005年度より《研究室》のみとした。さらに、2007年度からは卒業生向けの《せんたまブログ》を在学生向けと共用のものとし、2012年度から、Facebook(フェイスブック)を始めたので、ブログの方は2013年3月で閉じることにしたのである。やがて、スマホアプリのLINE(ライン)を用いることで、学生との連絡・情報共有も迅速に双方向的に行えるようになり、随分と様変わりしてきている。

保育・教育現場に身を置くと誰しも実感することなのだが、育った時代状況を共有しているせいか、学年によって異なる色というか、雰囲気がある。さらに構成員の個性を反映してか、クラスやゼミにも、それぞれの色があるものだ。例えば、子年メインの学生たちは、短大の講義の合間の休憩時間が10分しかないにもかかわらず、休み時間の度、エレベーターなき5階にある私の研究室までクラス全員で群がって階段を駆け上がってきた。寅年メインの学生たちは、教員のキャラに応じて授業時に獰猛「ガオーッ」になったり、甘えん坊「ニャーゴロゴロ」になったりの二面的な差がとりわけ激しかった。丑年メインの学生たちは、本当にのんびり屋揃いで、演習の準備にしても就職活動に際しても、取りかかりの遅さが目立っていた。もちろん、干支での区分は、星占いと同じで12種類しかなく、人間をわずかな分類区分で捉えきれるはずもない。だから、各学年の特徴を私自身が忘れぬための備忘のためと、本誌の章立てのために用いた便宜的なものに過ぎぬことを、ここでお断りしておく。

私と共に過ごした《せんせのたまご》たちは、卒業して《せんせのひよこ》となり、既に一人前の《せんせ》として保育者・教育者の道を歩み続けている者もある。大学へ《里帰り》してきたり、出張先で再会したりした時に、彼女たちの成長の姿を目にすることも楽しみの一つであった。加えて、わがゼミでは、交際中の彼氏や婚約者、結婚後の伴侶、さらには産まれた赤ん坊まで担任の私に紹介するのが常であったから、《せんせのせんせ》である私は、同時に、彼女たちの《折尾の父ちゃん》であり、その子どもたちの《折尾の爺ちゃん》でもあるのだった。折尾というのは、彼女たちの母校、私の今の勤務先の所在地である。

年をとったせいか、仕事への熱意が枯れかけているような時とか、休日なしの13連勤で体力が持たない時など、私がなんとなく弱っているときに、まるで見計らったかのように卒業生たちは現れる。無論、彼女たちに「白瀬を励ましてやろう」などという意図や目論見はあるまいが、共に過ごした時間を振り返り、互いのいまを語り合うことで結果的に多くの元気と力をもらったことも数え切れない。

そんなわけで、本誌には、縁あって関わった《せんたま》たちとの、とりとめのない時間がまったりと流れている。

末筆ながら、次の現場で新たな《たまご》たちを育てるための私的な振り返りに過ぎぬ本誌に、最後までお付き合いくださった読者諸氏にお礼を申し上げたい。


2018年2月
保育実習指導訪問の合間に

(「あとがき」より)



書籍購入の方法

本棚(総合)

本棚(教育学)

トップページ