原典でたどる電磁気学史




データ

編著者 翻訳者 作品の分類 ページ数
三星孝輝 三星孝輝 物理学 197

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 2,530 978-4-86420-208-4




概要
抄訳と解説でたどる電磁気学の形成と発展の歴史! 電磁気学史上における主要な論文の抄訳を網羅しました。マクスウェルによる電磁気学関連の論文のうち、本書には第一論文、第二論文、第三論文の抄訳が含まれており、井口和基氏の『マックスウェルの電磁気学』と合わせることで全論文が完結します。また、マクスウェル前後の電磁気学の形成と発展の流れを各科学者の原典抄訳で紹介。物理法則の発見に必要な発想法を培うことができます。


著者コメント

本書は以下の方々から読んでいただきたいと思っています。科学(電磁気学)の歴史に興味を持っている方、「科学の法則がどのようにして形成されたのか?」に疑問をもっている高校生・大学生、そして授業に科学史を採り入れてみようと考えている教師の方々です。

こう思うのは、私の2つの体験からです。1つ目は、高校・大学時代の物理の授業の経験からです。物理の授業では、法則が天下り的に出てきました。その時、「どうやってこんな法則を見つけることができたのか?」といつも疑問に思っていました。それで、自分と同じこういう疑問をいだいている学生に、本書で疑問を解消してほしいと思うのです。2つ目は、教員になってからの授業での体験からです。授業では、生徒の考えの中に昔の科学者と同じ発想が時々みられました。このことから、授業に科学法則の形成過程をアレンジして採り入れる事を考え付き、いくつか実践をしてみて有効だと分かりました。それで、理科教員の方には、本書などで科学の歴史を学び、授業に生かしてほしいと思うのです。

本書を出版しようと、思い立ったきっかけは退職後のことです。退職してから、学生時代から疑問だったマクスウエルの電磁場方程式の形成過程を3年かけてある程度調べました。そんな中、その成果を役立てることができないものかと考えていたところ、教員時代に読んで授業で非常に役立った原典抄訳集『近代科学の源流−物理学編T〜V』(北大出版会)を思い出しました。この本は、現在は絶版のようです。それで、これの電磁気学関係の部分だけを独立させて、自分が読んだマクスウエルの原典やその他不足している原典の抄訳も付け加えて復活出版できれば、冒頭の方々にも役立つものができると考えました。当初は、既にある抄訳を使わせてもらおうと考えていましたが、出版から40年以上経ち抄訳者を探すことはできませんでした。仕方なくそれらや不足分も含めて全部、独自に抄訳し直すことになりましたが、何とかまとめることができました。

目次
まえがき

第1章 初期の磁気研究
〔概説〕
・1-1 磁石の発見(吸鉄性の発見)
・1-2 磁石の指向性の発見
・1-3 磁石の実験的研究の始まり
〔抄訳1−@〕 ギルバートによる磁気の実験的研究の始まり

第2章 初期の静電気研究
〔概説〕
・2-1 静電気の発見
・2-2 ギルバートの静電気研究
・2-3 静電気的斥力と摩擦起電機の発明
〔抄訳1−A〕 ギルバートによる電気の実験的研究の始まり
〔抄訳2〕 ゲーリケによる起電機の発明とそれを使った電気的斥力の発見

第3章 電気学の新しい展開(18世紀)
〔概説〕
・3-1 静電気の伝導性の発見
・3-2 電気流体説
・3-3 ライデン瓶(静電気を蓄えるガラス瓶)の発明
〔抄訳3〕 グレイによる電気の伝導(伝導体と非伝導体)の発見
〔抄訳4〕 デュ・フェイの電気2流体説
〔抄訳5〕 フランクリンの電気1流体説
〔抄訳6〕 ノレ神父によるミュッセンブルークのライデン瓶に関する手紙の報告

第4章 静電気力・磁気力の遠隔作用論とクーロンの法則
〔概説〕
・4-1 静電気力の遠隔作用論
・4-2 磁気力の遠隔作用論
・4-3 静電気力・磁気力の法則(クーロンの法則)
・4-4 ポテンシャル論の展開とガウスの法則
〔抄訳7−@・A〕 クーロンによる電気的斥力・引力の逆2乗法則(クーロンの法則)

第5章 定常電流の獲得(電池の発明)
〔概説〕
・5-1 電気魚や2種類の金属の接触による生理的刺激の研究
・5-2 ガルヴァーニによる電流発見の端緒(動物電気)
・5-3 ボルタによる電池の発明
〔抄訳8〕 ガルヴァーニによる蛙の脚の筋肉運動に及ぼす電気作用の研究
〔抄訳9〕 ボルタによる電堆(電池)の発明

第6章 電流の磁気作用の発見
〔概説〕
・6-1 電気と磁気の関連性の暗示
・6-2 電流の磁気作用(磁針に及ぼす作用)の発見
・6-3 電流の磁気作用の研究の発展(電気力学)
・6-4 電流計の発明と電流の磁化作用の発見(電磁石の発明)
・6-5 電磁気回転(モーターの原型)
〔抄訳10〕 エールステッドによる電流の磁気作用の発見
〔抄訳11〕 アンペールによる電流間の相互作用の実験(右ネジの法則を含む)
〔抄訳12〕 ビオとサバールによる電流が磁針に及ぼす力の法則の発見
〔抄訳13〕 アラゴーによる電流の磁化作用の発見

第7章 電流に対する諸法則の発見
〔概説〕
・7-1 オームの法則の発見
・7-2 電気分解の法則の発見とイオンの存在
・7-3 ジュールの法則の発見
〔抄訳14〕 オームによる金属の伝導法則(オームの法則)の発見
〔抄訳15〕 ファラデーによる電気分解に関する用語の導入と法則の発見
〔抄訳16〕 ジュールによる電気の金属伝導体によって放出される熱量の法則

第8章 ファラデーによる電磁誘導の発見と近接作用論
〔概説〕
・8-1 電磁誘導の発見
・8-2 近接作用論
・8-3 ファラデーのその他の研究
〔抄訳17〕 ファラデーによる電磁誘導の発見
〔抄訳18〕 レンツによる誘導電流の方向に関する法則(レンツの法則)

第9章 マクスウエルの電磁理論と電磁波の存在確認
〔概説〕
・9-1 マクスウエルの電磁理論
・9-2 ベクトルポテンシャルの起源
・9-3 ヘルツによる電磁波(電波)の存在確認
・9-4 電磁場の物質からの独立(ローレンツ)
〔抄訳19−@〜B〕 マクスウエルの電磁場に関する第1〜第3論文
〔抄訳20〕 ヘルツによる電磁波の存在確認

第10章 電気の本性(電子)の発見
〔概説〕
・10-1 真空放電の研究
・10-2 ゼーマン効果のローレンツの電子論による説明
・10-3 原子より小さい質量の粒子(電子)が存在することの証明
・10-4 ミリカンによる電気素量を求めるための油滴を使った精密実験
〔抄訳21〕 ヒットルフによるグロー光線(陰極線)の発見
〔抄訳22〕 J.J.トムソンによる電子の発見

第11章 荷電粒子(電子)による磁性と電気伝導の説明
〔概説〕
・11-1 磁性の説明
・11-2 電気伝導の説明
・11-3 電流は電子の流れであることの実証
〔抄訳23〕 スチュアートとトルーマンによる電流は電子の移動であることの実証



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