僕らが見えなくなるまえに



データ

著者・編者名 作品の分類 ページ数
ヤハギクニヒコ 132

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
四六判 1,542 978-4-903447-10-0




概要
挫折に似た感覚に初めて襲われたのは、2003年の秋でした。平和ボケの新世紀の雑踏に紛れて、大切だった人達と、傷付け合っていました。過ぎ去らぬ後悔を、新しい何かに置き換えていくために旅する毎日。繰り返すことだけが、恐怖で、唯一の安定でした。

2004年に行った中国で、僕は確かに変わり始めました。生きることの意味を、考える前にすべきことを。香港の風水師は僕の心の中の恐怖と安定を見透かしたように、来年、すべてが始まることを告げました。占いを信じるかどうかよりも、嗚呼、始めるんだな、と納得させられたのを覚えています。そして僕は、焦点を越える決意をしました。

2005年の五月に新宿のライブハウスで公演後頭を打ちました。救急車はまるで僕の変わりに叫んでくれているようで、悪い気がしました。深夜、生まれて初めて自分の頭を輪切りにされながら、今まで詰まっていた何かの栓が外れたような気がしました。

不思議なことですが、僕は物心ついた頃から、もうある種の(誰かの)郷愁と共に生きていました。そこでは、記憶も希望も自棄もすべてが最初から色褪せていて、ただ哀しみに似た諦めが、どこか懐かしく傷を晒していました。それに合流するように、現実の、僕の生身の傷が開いたとき、僕は息を吐くように、詩を書くようになっていました。詩は心の傷を埋めるために出てくるのではないか? そんな風に思いながら、焦点へ向かって空間と時間を切り取っては貼り合わせて、真実のようなものに近づこうと、内側にも外側にも必死でした。越えてしまえば、後はもう、開くしかない。限りない拡散。

「僕らが見えなくなるまえに」はこの間の葛藤を、空気を、決意を、どこかに切り出しておきたいという気持ちから紡ぎました。事実、この五二篇の時空を通して、僕は変わることができたし、深く根を下ろすこともできたと思う。殆どが2005年秋〜2006年春に書いたものです。

「焦点までの一息」はそれ以前に少しずつ登り始めていた階段のような感覚と、今の感覚を時系列を外して直線上に配置しなおしていった1995年〜2005年まで10年間のオムニバスです。

この言葉達の幾つかが、誰かの心の郷愁と、傷に似た虚ろを埋めることができれば、幸いです。


                         (「B.G.M.」より)


目次

F.G.M.

Contents A
「僕らが見えなくなるまえに」

▼モノローグ  …… delete
▼ある秋の一日 1 …… 秋の朝のモラトリアム/昼下がりの真空/夕暮れ/NW
▼ある秋の一日 2 …… 羽毛/季節風/口笛/蜂蜜
▼ある秋の一日 3 …… 積み木崩し/中庭/赤い靴/街
▼ある秋の一日 4 …… 無音/水の音/炎/越冬
■ある冬の一日 1 …… 群衆/ぱりん/赤い実/呪術師
■ある冬の一日 2 …… 試験管/埋めていく/あっち/粉雪
■ある冬の一日 3 …… フリーズ/飽和/浮力/暖色
■ある冬の一日 4 …… 青い鳥/未来色/物質/落ちてゆきかた
■ある冬の一日 5 …… 一月/タイヤ/唯物論/薄氷
■ある冬の一日 6 …… 始発/冬のラブレター/リング/求音
■ある冬の一日 7 …… 白/明日を待っている/蒼い牙/横浜
●ある春の一日  …… さらさら/山吹色/80km/hのsync./春
●ダイアローグ   …… 無色

Contents B
「焦点までの一息」

▼f128▲ …… 真空
▼f64▲ …… 秋
▼f32▲ …… キュアー
▼f22▲ …… 歪むステンレス
▼f16▲ …… 蜘蛛の糸
▼f11▲ …… 石
▼f8▲ …… 物質
▼f5.6▲ …… 理想の空
▼f4▲ …… H2O(45-05)
▼f2.8▲ …… C
▼f2▲ …… 風の中で
▼f1.4▲ …… 地図
▼f1▲ …… お手軽な僕ら
▼f0▲ …… 気流

B.G.M.


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