実用新案『テレホンカード』

- アイデアの戦略的権利化 -



データ

著者・編者名 作品の分類 ページ数
高橋建雄 法律 148

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 2,052 978-4-86420-088-2




概要
テレホンカードは、携帯端末の普及により、今ではその影はすっかり薄まってしまった。改めてテレホンカードを見つめてみると、磁気カード一枚で電話が掛けられること以外に、2つの機能構成を持っていることが分かる。1つは、指先の触感だけで指し込み方向(表裏と前後)が識別できる『切欠部』であり、もう1つは、残度数を表示する『パンチ穴(穿孔)』である。この2つの機能構成は、今では当たり前とも思える誰でも考え付きそうな小さな「アイデア」に基づくものであるが、極めて有用なものである。

仮に、この小さな「アイデア」を使用する権利を個人発明家が取得した場合を考えると、これまでのテレホンカードの発行枚数だけを考えても、莫大な実施料になることは容易に算定できる。そのためには、実効力を持つ生きた権利を取得することが大前提であることは論を待たない。

本書は、この2つの『アイデア(発明・考案)』を出願して権利として取得するまでの過程について検証したものであり、その過程には想像を超えるようなドラマがあり、しかも、対照的であり、時機に応じた戦略的な対応が如何に重要であるかを示すよい手本となる。

本書により、両者の権利化過程を比較・検討することにより、今考え付いた「アイデア」を発明・考案として出願し、活きた権利へと結び付けるヒントになることを願う次第である。



著者コメント
最近、個人が「アイデア」あるいは「発明・考案」の権利を取得して成功した、あるいは、企業間が「特許・実案」で侵害訴訟で争った、とのニュースを聞くことが多い。

例えば、「スマートホン」の知的財産訴訟や「切り餅」の特許訴訟などがホットな話題となっている。「切り餅」訴訟では、「切り餅の周囲に切り込み(スリット)を入れた」構成が争われている。この「アイデア(発明)」に係わる構成自体は、コロンブスの卵ではないが、発明の構成としては簡単な構成であるが、アイデアに基づく試行錯誤等の積み重ねの結果として発明に結び付け、さらに出願して権利を取得するまでにも多々苦労があったものと想像に難くない。

本書では、筆者が長年特許実務に携わっていたことと、テレホンカードのコレクターであったこともあり、テレホンカードに関する発明・考案を見直し整理する中で、『切欠部』と『パンチ穴(穿孔)』に関する発明・考案に係わるドラマを知り、改めて調査し、検証してみた。

調査を進める中で、その「アイデア(発明・考案)」を出願して権利化する権利者の戦略性に的を絞ると、現在あるいはこれからの発明・考案の権利化にも通ずるものがあり、漫然とした対応では時機に合わせた有効な権利を得られないものと実感した。

本書が、企業の特許担当者は勿論、個人の発明家の方々にも参考になれば本望である。



目次
はじめに
 1 2つの登録公報 − 「切欠部」と「パンチ穴」
   「実用新案登録第260789号」は存続期間満了後の登録
   「特許第2664890号」は実案からの特許への変更出願
 2 ルーツを辿る − 長く・枝分かれの道程
   「実用新案登録第2607899号」は孫出願
   「特許第2664890号」は孫出願を特許出願に変更
 3 テレホンカード − 最初「切欠部」は無かった
   「パンチ穴」の機能
   「切欠部」は昭和60年に登場

第1部 「切欠部」関連の考案
第1章 存続期間満了後の分割出願 − 孫出願
 1 分割出願から登録までの軌跡
 2 出願審査のポイントは「押形部」の構成
 3 実施例の補正で登録査定
第2章 査定不服審判係属中に存続期間満了 − 子出願
 1 分割出願から登録までの軌跡
 2 拒絶査定の理由は進歩性欠如(旧実案法3条2項)
 3 拒絶査定不服審判では補正を却下
 4 拒絶査定不服審判により拒絶査定を取り消し
 5 拒絶査定不服審判では分割出願の適法性も審理
 6 2回の訂正審判請求は不成立
   1回目の訂正審判請求:審決取消の出訴も
   2回目の訂正審判請求
 7 「乗物用カード」に対する判定請求は不成立
   判定のポイント
   判定の詳細
第3章 補正で実施例を削除 − 親出願
 1 出願から登録までの軌跡
 2 出願審査:実施例の一部を削除したが拒絶査定
   拒絶理由は進歩性欠如
   実施例の一部を補正により削除
 3 拒絶査定不服審判:公告・登録異議申立を経て登録
第4章 侵害訴訟の提起
 1 親出願と子出願による侵害訴訟
 2 「技術的範囲に属さない」との裁判所の判断理由
   親出願の登録考案に対する裁判所の判断
   子出願の登録考案に対する裁判所の判断
 3 裁判所の共通判断ポイント
   第1のポイントは親出願の実施例削除の補正
   第2のポイントは親出願公告決定後の子出願の分割
  【各判決の判示内容】

第2部 「パンチ穴」関連の考案
第1章 特許出願に変更し権利拡張 − 孫出願
 1 分割出願から登録までの軌跡
   拒絶査定を待って特許出願に変更
 2 二つの権利拡張:「権利期間」と「権利範囲」
   「権利期間」の拡張
   「権利範囲」の拡張:「磁気カード全般」と「方法発明」
 3 第1ポイントは分割出願時クレーム:子出願の考案を承継
 4 第2ポイントは出願変更時クレーム補正:変更適法性確保
 5 付与後異議の審理では変更出願適法性を問題視
   特許異議の申立理由は「不適法な変更出願」
   異議申立に基づく取消理由通知
   変更出願適法性を訂正請求によりクリア
   親出願の出願日への遡及を認めて「特許維持」決定
   「特許異議決定」の内容
第2章 権利範囲拡張の試み − 子出願
 1 分割出願から拒絶審決確定までの軌跡
 2 「請求の範囲」を磁気カード全般に拡張:分割出願時
   拒絶理由通知で「分割出願不適法性」を指摘
 3 「請求の範囲」を別考案に変更:孫出願の分割出願時
   「分割出願適法性」を確保
 4 子出願は拒絶査定が確定
   「審決」の内容
第3章 自己実施に必要な権利を確保 − 親出願
 1 出願から登録までの軌跡
 2 拒絶理由通知に対応してクレームを補正し公告決定
   公知技術との対比



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