「記憶の河」を渡った旅人たち




データ

著者・編者名 作品の分類 ページ数
半藤正夫 英文学 245

書籍サイズ 定価(税込) ISBN
A5 2,750 978-4-86420-052-3




概要
人間の「記憶」は決して堅固な城ではない。「忘却」に絶えず襲われているからだ。だからこそ「記憶」は「再記憶」されなくてはならないのである。

過去の出来事を書き留めてあるのが歴史だとするならば、それをどう受け止めて心に記憶するかはわれわれの問題だろう。それは歴史が記憶とともに生き続けるためになされなければならない作業だ。

さて作家にとって「記憶する」ということはどういうことだろうか。本書ではホーソーン、フォークナー、そしてモリスンの三大作家が記憶と歴史の関わりにおいて、それぞれどのように過去と向き合っていたかを作品を通して論じている。それは作家が「記憶する」ことから何を創造しえたかと言うきわめてシンプルな疑問から発生したものでもある。

「記憶の河」を渡って「歴史の森」へ行脚を続けた三人の作家たちがそれぞれたどり着いた世界をご一緒に考えていただきたい。そこには『文学』の世界に昇華された歴史があるはずだ。


著者紹介
半藤正夫 (はんどう まさお)

1937年生まれ。
イースト・ウイスト・センター アラムナイ 会員
トニ・モリスン・ソサイアティ 会員
日本アメリカ文学会 会員
新潟工科大学名誉教授

目次
はじめに


第一部 魔女の記憶とホーソーンの十字架 《ホーソーン論》

第一章 「私の子は天の父を探すのです」と叫んだ女

第二章 ホーソーンの迷いとヘスターの迷い

第三章 引き継がれるピューリタニズムの光と影

第四章 「許されざる罪」の求道者たち

第五章 「陰うつ砦」のホーソーン

第六章 「ロマンス作家」ホーソーン

第七章 ホーソーンの女性像とマーガレット・フラー

第八章 罪の意識と因果応報

第九章 魔女の叫びにこめられた真相

第十章 『緋文字』誕生の謎を解く

第十一章 母子像・・・ヘスターとパール

第十二章 「緋文字」Aに封印されたもの


第二部 記憶によみがえる深南部 《フォークナー論》

第一章 フォークナーのペルソナ

第二章 自称「挫折した詩人」

第三章 フォークナーの「ミューズ」(詩神)

第四章 「失われた世代」から「南部」作家へ

第五章 フォークナー文学の難解さ

第六章 作品研究

作品1 『響きと怒り』・・・失敗作と言う遺産

作品2 『アブサロム、アブサロム!』・・・・「亡霊たち」の館・深南部

(間奏) 憎悪と愛おしさの狭間で叫ぶ・・・・「南部を、憎んでなんかいない!」

作品3 『八月の光』・・・・「黒い血」のものがたり

第七章 フォークナーからの伝言・・・「人間は滅びない」


第三部 アフリカニストの「記憶の河」《トニ・モリスン論》

第一章 アフリカ系アメリカ女性作家として

第二章 民族の歴史を取り戻す旅・・・ 「記憶の河」を渡って「歴史の森」のなかへ

第三章 黒人であることを支えとして

第四章 作品研究
・作品1 『青い目が欲しい』・・・黒人らしさを捨てた共同体
・作品2 『ビラヴド』・・・再記憶が呼び戻した亡霊たち
・作品3 『ジャズ』・・・変奏曲「わたしは音の女」
・作品4 『パラダイス』・・・神話に託した黒い神々の願い

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第一部 注
第二部 注
第三部 注


おわりに


主な参考・引用文献



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